なかまはずれ
- 童話
- 2018年3月17日
- 読了時間: 5分
更新日:2021年10月10日
なかまはずれ
この街に住んでいるのは働く車たちです。街の名前は、その数の多さからトラックシティと呼ばれています。
もちろん一番大事なものは燃料で、タンクローリーさんたちは忙しそうに働いています。だからレストラン(ガソリンスタンド)は今日も大繁盛です。トラックさんたちは日用品を運び、軽自動車君たちはもちろん宅配ですよね。新聞も配っています。さらに乗用車たちは役所や会社で働いています。そんなこんなで、毎日があわただしく過ぎて行きます。今日もトラックシティはとても忙しい街のひとつです。
そんな中で、ため息が少数の住人からもれてきました。
ダンプの砂利太(ジャリタ)君 『僕なんかこの間仕事をもらいに行ったら、こんな風に言われたんだ。「あんたはもうしわけないけれど、荷物も積みづらいうえに荷物をあんなふうに降ろされたら大事な商品に傷がついてしまう。悪いけどもう頼めないよ!」って、がっかりさ。』
パワーショベルの大(だい)君 『そうそう僕も同じようなことを言われたよ。「あんたは荷物も少ししか積めないうえに運ぶのが遅すぎるよ。」こんなことまで言われたんだ。』
ブルドーザーの力(ちから)君 『みんなはまだいい方さ、僕は舗装した道路はあまり歩くなと言われて買い物すら行けないよ。』
そうなんです、この3人はなかまはずれにされ、さらにトラックシティのはずれに追いやられているのです。かわいそうですね。3人はそれでも少しずつ小さな仕事をもらいながら助け合って暮らしていました。
夏もそろそろ終わり、相変わらずトラックシティはめまぐるしく車たちが行き交うとても忙しい街のひとつです。
今年は例年と違って台風が少なく穏やかに秋を迎える事が出来ると思われました。しかし、それから一週間後に台風発生のニュースがテレビや新聞の一面を埋めました。それでもトラックシティは台風の備えが万全で住民は早く台風が過ぎ去ることを願っていました。
さて台風が近づいてきて、その日は全住民が仕事を早く切り上げたり、臨時休業をしたりと台風が通り過ぎるのを待っていました。次の日は風が強く、一日大雨の日となりました。それでも幸いなことにトラックシティはこれといった被害はなく全住民がほっと一安心をしました。
さて一夜明けテレビやラジオのニュースでは、トラックシティと隣のトレーラーシティを結ぶ海岸通りの崖の一部が崩れて大きな岩や土砂が道をふさぎ通れなくなっているとの事でした。住民は不安になりました。トラックシティには一週間分の蓄えしかありません。街はちょっとしたパニックになりかけ、市長さんの所には問い合わせが相次ぎました。取りあえずトラックさんたちが土砂を積もうと思いながらもうまく積めず途方に暮れていました。
その頃、市長や主だった車たちは、町の長老の三輪トラックのヤコブじいさんのところに相談に行くことにしました。ヤコブじいさんは集まった車たちの前で、街にはそれぞれ目的に合った造りの車がありそれぞれが自分の働きをすることによって街は成り立っていることを説明し、崖の崩れのような時にはこんな形状の車が必要なんじゃと、図を書き出しました。市長はその図を見て「ああっ、これは私たちがなかまはずれにしていたあの三人に良く似ていないだろうか?」皆が大きくうなずいて、三輪トラックのヤコブじいさんに一緒に彼らのところについて行ってもらいました。
三輪トラックのヤコブじいさんは彼らを見て、「おおっ、なんと力強い見事な若者たちじゃ!」と叫んだ。
3人は市長や主だった車と三輪トラックのヤコブじいさんの突然の訪問に戸惑っていました。三輪トラックのヤコブじいさんは彼らに彼のもっている今まで持っていた秘められた能力の用い方を丁寧に教えて行った。そして市長や主だった車たちは食事を振る舞い、彼らにこれまでの無礼や振る舞いを誤り、彼らに街のためにその能力を生かしてほしいと頼みました。
さあ彼ら3人は三輪トラックのヤコブじいさんから彼ら本来の能力の用い方を教えられ、全住民の期待を背負い勇気を得て土砂崩れの現場に向かいました。
まず砂利太(ジャリタ)君と力(ちから)君は二人?で土砂を積み込んだり捨てたりで大活躍です。その仕事の速い事速いこと、あっという間に三分の一ほどの土砂が道路から片づけられていきます。そして大きな岩が現れた頃、大(だい)君の出番です。その爪を変えたりしながら大きな岩を砕いてゆきます。三人は連携良く作業を続けて行きました。力(ちから)君は崖下へ土砂を落とします。砂利太(ジャリタ)君は砕いた岩をこれもさらに崖下へ積んでは運び降ろします。みんなから良い評判を得れなかった時から見れば彼らは何とイキイキとして働いているのでしょう。その二日後には道路は3人の働きで無事に開通しました。
トラックシティの全住民は3人をパレードでお祝いしました。沿道の車たちは口々に彼らに感謝の言葉やねぎらいの言葉をかけて祝いました。彼らの晴れやかなすがすがしい顔はトラックシティの誇りですね。全住民は三輪トラックのヤコブじいさんの教訓を思い出して、皆がそれぞれの役割を一生懸命果たした結果、トラックシティはますます繁栄して行きました。
私たちもひとりひとり異なっていますが、ヤコブじいさんの教訓から学びたいものです。全体で見れば全員が関わり物事が成り立っていきます。あなたの学校のクラスでは、会社では、街では、なかまはずれはいませんか?
そうです、この世界では一人一人が貴重で仲間はずれはいないのです。
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